What We Need番外 プレイアブルとは

筆:lighdar(らいだー)@lighdar_mtg(鍵)

先日のオフラインいむドラにていつものように「プレイアブルが足りない」「デッキが37枚しかない」「ゴミを3枚入れないといけない」などと叫んでいたら、「らいだーさんはプレイアブルの基準が高すぎる」「基準が違う」と言われてしまった。また、他人が「いいデッキ組めた」「3-0できる自信ある」と言っているデッキ(得てして2-1や1-2している)に、自分からすればアンプレイアブルなカードが混じっていることがしばしばあった。

では何がプレイアブルで何がアンプレイアブルなのか。よく考えるとあまり言語化されていない部分かもしれない。わかっている人には当たり前のことの繰り返しになると思うが、意外とわかっていない人が多いと感じたので、筆を執った次第である。なお現在オフラインいむドラ4連覇中と非常に調子に乗っているので、上からなのにはご容赦いただきたい。
(ここでいう「わかっている」「わかっていない」の話は概念における話であって、個別のカード評価に対する話ではないことに注意)

ちなみに念のため言っておくと、プレイアブル(playable)とは「使用に耐える、採用に値するカード」という意味で、アンプレイアブル(unplayable)はその逆である。

ドラフトにおけるカードは、以下の4種類に分けられる。

1) どんなデッキにも入るカード
2) 通常はプレイアブルだが一定の条件下でアンプレイアブルになるカード
3) 通常はアンプレイアブルだが一定の条件下でプレイアブルになるカード
4) 常にアンプレイアブルなカード

1) どんなデッキにも入るカード

例:《大嵐》《死者蘇生》《奈落の落とし穴》

いわゆるタダツヨ(ただただ強い)枠。プール中の1割ほど。《ハーピィの羽根帚》のサイド行きに象徴されるように、現代遊戯王ではこの枠は時代と共に減少しついに消滅したようだが、デッキコンセプトを構築ほどに尖らせることが不可能なドラフトにおいてはまだまだ健在である。
この枠の存在にどういう意味があるのかというと、カードパワーの高すぎるカードは多少のアンチシナジーに目をつぶって入れるべきだということである。例えばたとえ罠の15枚入ったデッキにも《大嵐》は入れるべきである。
余談だが、先日のドラフトで帝デッキに《Samurai Cavalry of Reptier》を仕方なく入れたらとても強かったので、《Samurai Cavalry of Reptier》もこの枠だと思われる。


2) 通常はプレイアブルだが一定の条件下でアンプレイアブルになるカード

例:《緊急テレポート》がないときの《クレボンス》
罠ビートにおける帝モンスターやリバース効果モンスター
帝デッキやシンクロデッキにおける単純なビート要因

プールの7~8割ほどのカードがこの枠に含まれる。
《緊急テレポート》のない場合の《クレボンス》のような当たり前のものを除けば、ここに含まれるカードは総じて、「デッキコンセプトに合わない」場合にアンプレイアブルになるカードである。「デッキコンセプトに合わない」とはどういうことか。伝わりにくい概念だと思うので、具体例を用いて解説する。

playable1.jpg

このデッキは、某氏がドラフト終了時「史上最強デッキ」宣言から0-3を決めたデッキである(勝手に使ってごめんなさい)。
デッキのコンセプトは、罠を薄くするのと引き換えに《黄泉ガエル》にアクセスして帝を連打する由緒正しき【黄泉帝】だ。

・《黄泉ガエル》へのアクセスが自身含めて4枚(もう1、2枚は欲しい)
・メインギミックで触れない《邪竜星-ガイザー》などへの解答にもなるパワーカード《帝王の烈旋》2枚
・薄い防御をカバーする《トラゴエディア》2枚
・《黄泉ガエル》にアクセスするまでの場をつなぎつつ生贄になる《サイバー・ドラゴン》《フォトン・スラッシャー》(4枚は多すぎ)
・脇を固める《早すぎた埋葬》《聖なるバリア-ミラーフォース-》といったタダツヨ群

と一見(欠点はあるが)強力に見える。

しかしながら、自分に言わせればこのデッキはノイズが多すぎる。このデッキにおいては、《ライトパルサー・ドラゴン》《異界の棘紫獣》《霞の谷のファルコン》《X-セイバー エアベルン》《幻獣機レイステイルス》《ジェット・シンクロン》《ゾンビキャリア》《禁じられた聖杯》《神の宣告》がアンプレイアブルである。

《ライトパルサー・ドラゴン》は、一般的に2500打点の返し札として強力なカードだ。しかし、このデッキが返し札を要求される場面は、帝モンスターを返された状況=相手が2400を超える打点のモンスターを用意した状況が多いことが想像できる。その場合に役割を果たせない《ライトパルサー・ドラゴン》は、コストを安定的に調達できそうもないことを含め採用したいカードではない。

《霞の谷のファルコン》は、《早すぎた埋葬》2枚と合わせて一見強力に見える。しかし、《黄泉ガエル》の横に召喚されるこのカードの姿を想像してみて欲しい。もちろんバックはないので、返しに淡々と戦闘破壊されるだろう。無情である。そもそも召喚権は帝に割きたいのだ。

《ジェット・シンクロン》は、「ジャンク」モンスターがいないこのデッキにおいては《ワン・フォー・ワン》で呼べる《ゾンビキャリア》に過ぎない。《グローアップ・バルブ》の存在から《ワン・フォー・ワン》対応にすら価値がなくなり、到底採用できるカードではない。

《神の宣告》は、このなかで一番難しいカードだ。かなりタダツヨ枠に近いカードであるため、無条件に採用したくなる。しかし、【黄泉帝】は《黄泉ガエル》の効果の都合上魔法罠ゾーンを空にすることが求められ、罠を敷く場合は溜め込まず積極的に消費することが求められる。一方で《神の宣告》はここぞというときまで温存したいタイプの罠なので、致命的に噛み合わない。加えて【黄泉帝】は罠でライフを守ることが難しいため、コストも重くのしかかる。
サイドに控える《サイクロン》や《邪神の大災害》、もしくは単純に追加の《次元幽閉》などの方がデッキの方向性に合致しているだろう。

《異界の棘紫獣》《X-セイバー エアベルン》《幻獣機レイステイルス》《禁じられた聖杯》《ゾンビキャリア》は、後述のカテゴリに分類される元々のカードパワーの低いカードであり、このデッキで評価を向上させる特段の理由も見当たらないため、採用に値しない。

ちなみにこれは余談だが、今回の話で《緊急テレポート》ギミックが【黄泉帝】と非常に相性がいいことをわかってもらえるだろうか。
《幽鬼うさぎ》は《トラゴエディア》と同様の防御の役割を果たし、《クレボンス》は《魂を削る死霊》に近い役割を単体で果たすことができる。そして《緊急テレポート》は《サイバー・ドラゴン》同様の生贄素材としての役割を果たすと同時に、シンクロを通じて《カオス・ソーサラー》のような返しとしての役割を果たし、かつ《BF-精鋭のゼピュロス》のような強力だが素引きすると困るカードに素材としての役割を与えることができる。
シンクロデッキで使うと《レッド・リゾネーター》並みの性能に留まりがちな《緊急テレポート》だが、【黄泉帝】においては地味ながらあらゆる面がデッキに噛み合った最強カードとなるのである。

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こちらは、筆者のドラフトした罠ビートだ。一見非常に弱く見え、事実非常に弱いのだが、なぜか3-0してしまった。パックの出が偏っていて卓がぐちゃった結果全員のデッキが弱かったことや、オフドラではオンドラと違って必ずしも経験豊富な参加者が多い訳ではないことが大きな原因として考えられるが、自分がこの記事を書くにあたってもう一つ挙げたいのが、このデッキにはコンセプトに反するカードが比較的少ないということだ。

 このデッキでアンプレイアブルながら仕方なく入っているカードは、《霞の谷のファルコン》と《幽鬼うさぎ》の2枚のみである。(もちろん3-0デッキとしては2枚と言うのは非常に多い。0枚が常識。)

《霞の谷のファルコン》は、このデッキではほとんど2000バニラで、さすがに許されない性能。

《幽鬼うさぎ》はこのデッキでは手札誘発である意味もチューナーである意味もほぼなく、追加の罠の方がずっと有効である。

一方で《禁じられた聖杯》は、《フレムベル・ヘルドッグ》《ジュラック・グアイバ》擁するこのデッキなら許容できる。

《煉獄の落とし穴》《ブレイクスルー・スキル》は、他の罠が豊富なため有効に使えるまで待つことができるので、許容できる。

2枚しかない《輪廻天狗》や中途半端なTGギミック は、《激流葬》や《聖なるバリア-ミラーフォース-》を気にせず追加できる打点として罠ビートと噛み合っている。枚数を集めきれていないので後続切れが起きやすいとはいっても、元々後続のない追加の《サイバー・ドラゴン》あたりよりは余程デッキに合っている。

《ジュラック・デイノ》は、豊富な《ジュラック・グアイバ》《化石調査》とメイン2で出しても強力な7シンクロである《PSYフレームロード・Ζ》の存在から、採用が肯定される。

3) 通常はアンプレイアブルだが一定の条件下でプレイアブルになるカード

例:《ゾンビキャリア》《A・ジェネクス・バードマン》《X-セイバー エアベルン》《深淵の暗殺者》《エレキック・ファイター》《ジュラック・デイノ》《幻獣機レイステイルス》《エレキリン》《次元合成師》《異界の棘紫獣》《禁じられた聖杯》《抹殺の使徒》《エクシーズ・リボーン》《ブレイクスルー・スキル》《幻影霧剣》《時空の落とし穴》《転生の予言》《魔宮の賄賂》《煉獄の落とし穴》《邪神の大災害》


プールの1割~2割ほどのカードが含まれる。プールごとに「カード1枚に求められるパワーレベル」というのに一定の基準があり、それをみたしていないと感じられるカードがここに該当する。普通に使うと弱くて使い物にならず、お膳立てしてやってようやくカード1枚分、そのお膳立てもしばしば相手依存といったカード群である。


せっかくなので例と言いつつ7期プールで自分がこの枠に含まれると考えているカードを全て列挙した。
いわゆる「サイドカード」と、シナジーが多ければぎりぎりメインに入るカードの2種に大別される。

《抹殺の使徒》《時空の落とし穴》《転生の予言》《煉獄の落とし穴》《邪神の大災害》はわかりやすくサイドデッキ向きのカードである。

落とし穴二種に異論を唱える人がいるかもしれないが、罠というのは基本的に前を守るためのカードであり、例えば《Samurai Cavalry of Reptier》の後ろに置けばある程度安心できるカードでなくてはいけない。その条件を満たさない罠はどうしても評価が下がるのだ。(《波紋のバリア -ウェーブ・フォース-》も前を守れないが、発動条件の緩さと決まった時の強力さから十分メインに入れられる。エクストラを使わないデッキはあってもダイレクトしないデッキは存在しない。)
しかし例えば罠の絶対量が多く、単純な防御には他の罠を使って相手が大ぶりなアクションをするまで待つことのできるデッキなら、両落とし穴のメイン採用が肯定されるだろう。(その場合《ブラック・ローズ・ドラゴン》をケアできる《煉獄の落とし穴》が優先される)

《X-セイバー エアベルン》は特定の場合にメインに入りうる。例えば《素早いビッグハムスター》のサーチ先は《ライトロード・ハンター ライコウ》《ペロペロケルペロス》のみで極力済ませたいが、その2種を十分に確保できず、かつ《巌征竜-レドックス》のコスト要員を増やしたい場合である。

《ゾンビキャリア》は、《ゴヨウ・ガーディアン》と《終末の騎士》および《増援》《キラー・トマト》のような《終末の騎士》にアクセスできるカードが複数枚ある場合、デッキに欲しい1枚となる。

複合パターンとして、《ジュラック・デイノ》は、リクルーター軸のカオスなど安定して効果起動が見込める相手に対する良いサイドカードとなるほか、《ジュラック・グアイバ》を採用したデッキでメイン2に立てる意味のある強力なレベル7シンクロモンスター(《邪竜星-ガイザー》など)を擁する場合に、メインデッキ入りが肯定される。


4) 常にアンプレイアブルなカード

例:《ジゴバイト》

プールから即刻削除すべきノイズ。理想的な世界では常に20手目に残る。

おわりに

実戦的には、ドラフト中常に現在何枚プレイアブルを確保できているかを考え、エクストラを取る余裕があるか、カットにまわる余裕があるかを見極めることになる。
デッキに入るべきカードは
1)タダツヨカード
2)デッキコンセプトに反しない、通常プレイアブルなカード
3)デッキコンセプトに強力に合致した、通常アンプレイアブルなカード

の3種類のみである。「デッキコンセプトに反しない・合致する」とは、「デッキ内で役割を持つ」と読み替えてもらって構わない。

MtGのプロプレイヤー中村修平は、自身のコラムのなかでこう述べている。

 私のドラフトデッキでのセオリーの中に、ゲーム構築をする上で役割に説明が付けられないカード、最たるものが殆ど攻撃もブロックにも使えない能力無しの1/1クリーチャーですが、そういうカードを入れてしまっているデッキは評価する価値がそもそも無いという考えがあります。

これは遊戯王ドラフトにもそのまま適用できる考え方だ。1800バニラが入っているようなデッキは論外だが、それに準ずるような「デッキコンセプトに合わないカード」を入れてはならない。
さらに余談だが、コラム「中村修平のドラフトの定石!」
はドラフトをするあらゆる人にとって必読の記事なのでぜひ読んでほしい。当記事の内容もベースはそこにある。

  • 最終更新:2016-03-09 20:09:30

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